人型エコー検診アンドロイド


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 この春、私は新しく開発された医療器具のテストを受けることになった。
 ネットで募集されていた一日限りの仕事で、エコー検査に使う最新マシンが実用に足るものかをテストするらしい。これが結構な報酬で、たった一回被験者になるだけで五万円だ。とても美味しい条件だ。
 今は思うようにお金に余裕のできないご時勢だし、稼げる時に稼いだ方がいいに決まっている。募集条件には女性限定とあったから、もしかしたら恥ずかしい検査もあるんだろうけど、きっとオッパイを見せる程度のことだろう。
 別に誰にでも平気で見せるわけじゃないけど、検査ということなら我慢ができる。病院でも必要な場合はブラまで取るんだし、医者の前でなら慣れっこだった。
 私は無地のシャツとゆったりとしたスカートを履いて、指定の病院へ向かう。受付を通ってしばらく待つと、番号札を通して呼び出しがされた。
 そして、いよいよ診察室へ……。
「どうも美香さん。今日はよろしくお願いします」
「はい。お願いします」
 私は医師へ軽く会釈して、そこに置かれていたロボットに目を向けた。
 アシモくん?
 では、ない。
 デザインはちょっと違うけど、それに似た形状のロボットが医師の隣には立っていた。股間部にはペニスを思わせる棒が取り付けられていて、それがどうにも気になってしまう。
「あの、それは?」
 私はロボットについて尋ねる。
「ああ、これが最新の医療器具です」
「器具って、ロボットですよね。それ」
「そうなんです。最近ではロボットに医療を行わせようという試みがありまして、その試作機がこちらなのです」
 医師は大仰な身振り手振りで語りだした。
「は、はぁ……」
「彼はベータ君というのですが、エコー検査のための超音波機能を搭載しております。エコー検査についてはご存知ですか?」
「一応、知ってます」
 身体へ超音波を当てることで、体内の状況を画像として映し出す。医師はその画像を見て病状の有無を確認できるというわけだ。
「ベータ君は女性患者にエコー検査を行い、それを背中にあるモニターに映し出します。ごらんください。画面が付いているでしょう?」
 医師は覗いてみるようにと促してくるので、私はベータ君の背後へまわってみた。確かにモニターが背中に搭載されていて、しかもその下にはディスクの挿入口まである。
「もしかして、録画もできるんですか?」
「はい。必要しだいではエコーから取る超音波動画を録画して、あとから確認をすることができます」
「うーん、そうですか。でも、エコー検査って普通に手で持てるサイズの器具があるじゃないですか。あっちの方が使いやすそうな気がしますけど?」
 私は心底そう思った。
 わざわざ人型ロボットにしたって、これは効率が悪い気がする。コストだって無駄に高くなるだろうし、メリットが少ないことは素人にも丸わかりだ。
「ですから、これはほんの入り口なのですよ。将来的により便利な医療マシンを開発するため、自律型ロボットにどこまで検査機能を積み込めるかの実験が行われているわけです」
 そうか。
 何もベータ君を医療現場に導入しようという話ではない。ロボットに検査をやらせるということからスタートして、だんだんと発展した機械を作ろうということか。
「わかりました。それで、私はどうすればいいですか?」
 尋ねつつ、私はベータ君の股間から生えたスティックを気にかけた。どう見ても男性器を思わせる形状をしていて、検査内容にちょっと不安を覚える。
「少々お待ちください」
 医師はベータ君のスティックにコンドームを取り付けた。
「あのぅ、それって……」
「これは感染症を防ぐための対策です。こうすることで細菌の付着を防ぎ、使いまわしをしやすくするのですよ」
 細菌の付着を防ぐ。
 使いまわし……。
 ということは、私が受ける検査ってやっぱり……。
「では美香さん。これを口に咥えていただけますか?」
「え!? 口ですか?」
「はい。脳の診断画像を取る検査をするため、口内へエコー器具を挿入して頂きます」
「でも、それはちょっと聞いていないんですけど……」
「美香さん。検査内容には女性にとって恥ずかしい内容もあるとはお伝えしてあるでしょう」
「それはそうですが……」
 オッパイを見せれば済むだろうな、程度に考えていた。
「すみませんが、ここまで来たのです。たったの数時間で五万円という破格の給料なのですから、どうかご協力下さい」
「……わかりました」
 面接時に契約を結んでいるので、駄々をこねるわけにもいかないだろう。
「ではベータ君。座りなさい」
 医師はベータ君の後ろに椅子を置き、リモコン操作なのかポケットから取り出した器具で操作をする。
 ウィーン、と機械の間接音を立てながら、ベータ君は着席した。
 やや背中を仰け反らせ、足のあいだにいる女を見下ろすような格好になっている。私としてはいい気分がしないのだけど、その足のあいだに入ってスティックを握った。
 うわぁ、ゴムっぽい材質……。
 しかも、意外と太さがある。
 私は口を大きく空けて、スティックを咥え込む。ロボットに見下ろされながらフェラチオまがいのことをするなんて、すごく嫌な気分だ。
「頭を前後させてください」
 医師の指示なので従っておくが、これでは本当にフェラチオじゃないか。
 まあロボットを気持ちよくしてやる必要もないだろうし、だから舌は使わない。私はただ淡々と頭を動かしていく。
 そのままベータ君の顔を見上げれば、機械の顔面とばっちり目が合う。
 ああ、嫌だなぁ。
 それでも私は頭を振り、検査を終了させた。

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