犬伏文音とカオナシ様


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*今作に登場する民俗学は架空のもので、作者の創作です。
  実際の資料を参考にしたものではありません。


 犬伏文音は浴室で身を清め、一点の汚れのない裸体で清潔な布団に横たわる。一応タオルで拭きはしたものの、まだうるおいの残った肌には大気がひんやりとして感じられた。
 本当に来るのだろうか。
 大叔母は言っていた。

「カオナシ様がお前の霊気を強めてくれる」

 この村に伝わる因習の一つ、犬伏は代々カオナシ様という神様を祭っており、村に豊作を、オミコサマに高い霊力をもたらして下さる代わりに、オミコサマの女体を頂きに来るのだと言われている。
「カオナシ様の顔を見ちゃいけないよ。見てしまったら、お前の顔が取られてしまう。好きにさせてやらなきゃいかん。されるがままに、全てを受け入れるんだぞ?」
 大叔母はそう言って、目隠しを渡してきた。
 顔を見ないために――。
 視界を布で覆い尽くした事で、耳と肌全体に神経が行き渡る。静けさの中で唯一の音を発する文音自身の呼吸音、大気の流れを敏感に感じ取る皮膚の触覚。目隠しを巻いている事で、その他の器官が活発に働いているようだった。

 すー……

 襖のゆっくりと開く摩擦の音が鼓膜を撫でた。
 とうとう来た。文音は覚悟を決める。
 畳部屋にやって来た気配は足音もなく文音に近寄る。目隠しの向こうに誰かが立って、裸体を目で嬲られているのが文音にはわかった。まずは顔、そして唇、それから胸。だんだん下へ降りていき、秘所から足の先までを品定めされている。
 年頃の羞恥心が働いて、手で隠したい思いにかられた。
 しかし、大叔母の言いつけを思い出す。
「顔を見ちゃいけない。それから、神様に失礼があってもいけない。せっかく気に入って下さったのに、もしも失礼を働いたら、カオナシ様はやはりお前の顔を取ってしまう。されるがままになるんだぞ?」
 厳しい言いつけが強く頭に残っていた。
 そのせいか、やけに冷静な自分がいた。確かに恥ずかしい気持ちはあるが、人ではない存在に対して、異性に裸を見られた時のような常識的な羞恥心は沸いてこない。人でないものへの不安と畏れが、隠すなどという神様に対して失礼な行為を封じていた。
 せっかく視姦して下さっているのだから、受け入れなくてはならない。
 さも当たり前のように、文音はそう思い始めていた。

 すー……

 手が、乳房へ伸びてくる。
「あっ……」
 人間の手とは違った温度のない手の平を乗せられて、不思議な感触が胸を揉んだ。まるで大気が固体のように固まって、人の形を成した何かに揉まれているような感覚。あるいは胸自体が勝手に動き、さも誰かに揉まれでもしているような感覚。  感触無き感触が文音の胸を揉みしだく。
 自分の肉体を気に入って頂けたのだと文音は悟った。カオナシ様は人とは違い、決まった女の好みはないが、ともかく汚れを嫌うとされている。肌に垢一つでも残っていれば、たちまち狂ってその女の顔を取ってしまうという話だ。
 カオナシ様に捧げる大事な自分に肉体を、文音は前もって清めていた。素肌はもちろん、尻の穴から秘所の割れ目にある恥垢まで、くまなく綺麗に洗ってある。陰毛さえ剃り落とし、文音の肢体は全くの清潔だった。
 綺麗な身体をお気に召し、カオナシ様は己の体を文音に擦り付け、全身で文音を味わう。脚を絡ませ、全身を撫で回し、首筋から女体の香りをすーっと吸い込む。言いつけを守った文音は一つも抵抗せず、全ての愛撫を受け入れていた。
 頭を掴まれ、接吻される。
「んん……」
 おびただしい唾液を吐き出され、口移しに流し込まれる。初めての口付けであったが、極力慌てずに気持ちを落ち着け、舌に広がる粘性の味を静かに飲み込む。
 大叔母は言っていた。
「カオナシ様の体液は神聖なものだ。それを取り込むことで霊力を高められる。そいつを受け入れることはありがたいことなんだぞ?」
 前もって聞かされていた情報が余計な混乱を抑え、文音は黙々と喉を鳴らしてカオナシ様の唾液を飲んでいた。
 やがて口は離れていき、糸を引いた唇をそっと指で撫でられる。

 ペロリ、

「ひぁっ……」
 不意に耳を舐められ、文音は喘いだ。
 耳穴をくすぐるような舌先は次に首筋へ吸いつき、それから乳首を舐めた。甘えん坊のように乳房をしゃぶり、ベロベロと踊る舌が乳首を舐め回し、文音は性感に熱く息を荒げていた。
「はぁ……はぁぁ……」
 カオナシ様はとても上手だ。初めての文音を優しく攻め、じっくり快感を引き出すように丁寧に愛撫する。舐められた乳首は唾液を帯び、舌との摩擦でじわりと熱をあげ、艶めかしく突起していた。
 その乳首が摘まれて、指先で捏ね繰られる。静電気にも似た熱く痺れる快感が蓄積し、触れれば快楽が弾けるほどに敏感になっていく。いつしか文音自身、胸を揉んでもらうことに夢中になっていた。
 ああ、カオナシ様の性具に仕立て上げられている……。
 オミコサマとは代々カオナシ様に仕え、己の身体を捧げるのが務めなのだ。
「あっ、あはぁぁ……」
 顔を秘所へ薄められ、乙女の扉を舐め込まれた。ねっとりとした舌で、割れ目がじわじわと痺れるまで刺激され、やがて入り口へ舌先を押し込まれる。未経験の秘所は丁寧にほぐされ、舌で舐められる膣口は柔軟に広がり、蜜液を滴らせた。
 いよいよだ。
 次に入り口へあてがわれたものが、いかに太く長いものなのかが想像できる。こんなものが自分の中に入りきるのかと不安もあったが、文音は努めて平静を維持して、目隠しの内側で目を瞑った。

 ズニュゥ……

 入ってくる。
 太い剛直が入り口を押し広げ、膣壁を拡張させながら根元まで埋め込まれる。破瓜の血が布団を染め、文音は自分の中にある熱く脈打つものを鮮明に感じ取っていた。
 動き始める。
「くあぁ……」
 初めての痛みに喘ぎ、文音は逆手でシーツを鷲掴みにした形で性交を受け入れる。
 痛みや刺激でつい反射的に抵抗してしまった、なんてことは起こすまいと脚を広げ、まともな乙女にはとても出来ないような卑猥な開脚で前後運動を受け止めた。
「ひぁっ、あぁぁ……」
 腰を打ちつけるように揺さぶられ、突き上げられる。
「あっ、あぁぁ……」 
 膣道に押し入られ、中身がカオナシ様の棒に合わせて押し広がる。こうして肉棒の形を覚えさせられるのは、これは自分の女だとオスにマーキングでもされている気分がした。こうして自分はカオナシ様のものになっていくのだと、文音は静かに悟っていた。
「くあっ、あぁ……あぁぁ……」
 焼け付く痛みに脂汗を滲ませて、文音は髪を振り乱した。
「ひきゃぁぁ……」
 情交の中、文音の脳裏には自分の運命が過ぎっていた。
 ミコトが後を継いでいれば、ここで初めてを失うことはなかっただろう。才能に乏しいと溜め息をつかれることもなく、厳しい修行に励む必要もなく、今も美大を目指していたはずだ。ミコトに対して、八つ当たりのような気持ちを抱くなという方が無理だった。
 しかし、次の瞬間に密かに抱いた恨めしさは打ち消される。
「――――――っ!」
 奥まで突き込まれている熱い肉棒が脈動し、ドクドクと熱い塊を放出する。この膣内に広がる熱さの正体が何であるかなど、考えるまでもなかった。
 こ、これで私はもう……。
 もはや一切の後戻りは許されない。
 犬伏文音は完全に、カオナシ様の所有物となったのだ。

     †

「!」

 気がつくと文音は、布団の上に横たわっていた。
 確かに今まで熱い交わりの中にいたはずだが、突然夢から覚めたかのように、文音は何事もない単なる全裸で横たわっていた。
 だがしかし、夢だと言い切るにはあまりにも鮮明に、肉体を弄ばれた感触が残っている。
 自分の股を見る。
 破瓜の血が流れてていた。膣にわだかまる痺れた痛みと、熱い何かを注がれた熱い残滓が滞留している。
 夢であって夢ではない。自分は確かに、今の今まで普通ではない体験をして、情事の済んだ途端に常識の世界へ送り返されたのだ。
 文音は静かに、大叔母から聞いた最後の知識を思い出す。

「カオナシ様は週に一度はやって来られる。きちんと相手をするんだぞ?」

 これから毎週、今日と同じ情事が待っているのだ。



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